歳のせいと諦めていませんか?感情の起伏

年齢を重ねると、感情の起伏が大きくなったり、コントロールが難しくなったりすると感じることがあります。これは様々な要因が絡み合って生じる自然な変化です。

ホルモンバランスの変化 更年期になると、女性ホルモン(エストロゲン)や男性ホルモン(テストステロン)の分泌量が急激に減少します。これにより、自律神経が乱れやすくなり、イライラ、不安、気分の落ち込みといった感情の波が大きくなることがあります。

脳の変化 加齢に伴い、感情のコントロールに関わる前頭葉の機能が少しずつ低下することがあります。また、セロトニンやドーパミンといった神経伝達物質の分泌も減少し、幸福感ややる気の低下につながることがあります。

生活環境の変化 定年退職、子どもの独立、パートナーとの関係の変化、健康問題など、ライフステージの変化がストレスとなり、感情の不安定さにつながることがあります。

また、漢方医学では、感情の起伏を単なる心の状態として捉えるのではなく、身体全体の状態と深く関連していると考えます。この考え方の根底にあるのが、以下の3つの要素です。

目次

1. 気・血・水のバランス

漢方では、私たちの体を構成し、生命活動を支える基本的なエネルギーや物質を「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」の3つに分けて考えます。

  • 気(き): 目に見えない生命エネルギー。体を温めたり、動かしたり、精神を安定させたりする働きがあります。
  • 血(けつ): 全身を巡る栄養物質。体の組織や器官を養うだけでなく、精神活動にも深く関わっています。
  • 水(すい): 血液以外の体液。潤いを与え、体温を調節するなどの働きがあります。

これらのバランスが崩れると、心身に様々な不調が現れます。特に感情の起伏は、「気」の流れの乱れが原因となることが多いとされています。

2. 五臓六腑と感情の関係

漢方では、内臓(五臓六腑)がそれぞれ特定の感情と結びついていると考えます。

  • 肝(かん): 感情のコントロールや自律神経の働きを司る「肝」が重要視されます。ストレスや怒りによって「肝」の気が滞ると、イライラ、怒りやすさ、抑うつ、感情の起伏が激しくなると考えられます。この状態を「肝気鬱結(かんきうっけつ)」と呼び、特に女性に多く見られるとされます。
  • 心(しん): 精神活動や思考を司る「心」は、喜びに深く関わります。心が不安定になると、不安感や動悸、不眠などの症状が現れやすくなります。
  • 脾(ひ): 消化吸収を司る「脾」は、思慮や心配と関連します。思い悩むことが多いと「脾」の働きが弱まり、食欲不振や倦怠感、精神的な不安定さにつながることがあります。      
  • 肺(はい)「悲しみ」や「憂い」といった感情と深く関連しているとされています。もともと肺が弱い人や、季節の変わり目(秋など)で肺の機能が影響を受けやすい人は、気分が落ち込みやすくなったり、些細なことで悲しみを感じやすくなったりすると考えられます。                  
  • 腎(じん): 成長、生殖、老化と関連する「腎」は、恐れや不安と結びついています。加齢による「腎」の衰えは、不安感や物忘れ、倦怠感といった心身の不調を引き起こすと考えられます。

3. 年齢と「腎」の衰え

年齢を重ねることによる感情の起伏は、特に「腎」の衰えと深く関係していると考えられます。漢方では、更年期を含め、加齢に伴う様々な不調は「腎」の気が衰えること(腎虚)が根本原因にあると考えます。

「腎」の気が弱まると、ホルモンバランスや自律神経の調節がうまくいかなくなり、それに伴って「肝」や「心」の働きも影響を受け、感情の起伏が激しくなったり、イライラや不安感が強くなったりすると考えられます。

このように、漢方では感情の起伏を単一の原因ではなく、個人の体質、生活習慣、そして五臓六腑のバランスの乱れが複合的に絡み合って生じるものとして捉えます。

年齢による感情の起伏に漢方薬を用いることは、東洋医学的な観点から心身のバランスを整える有効なアプローチとされています。特に、更年期や加齢に伴うホルモンバランスや自律神経の乱れ、それに伴うイライラや不安感、不眠などの精神症状に対して、個々の体質や症状に合わせた漢方が選ばれます。

よく用いられる漢方薬の種類

漢方

感情の起伏に用いられる代表的な漢方薬には、以下のようなものがあります。

  • 加味逍遙散(かみしょうようさん): 女性に多く処方される漢方薬で、のぼせ、冷え、イライラ、不眠、肩こりなど、多様な更年期症状に効果があるとされています。「気・血・水」のバランスを整える作用があり、自律神経の乱れからくる精神的な不安定さを改善します。
  • 抑肝散(よくかんさん): 神経の高ぶりを鎮める効果があり、イライラや興奮、不眠、神経症などに用いられます。もともと子どもの夜泣きやひきつけに使われていましたが、最近では高齢者のイライラや認知症の周辺症状(BPSD)に対しても効果が期待されています。
  • 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう): 比較的体力がある人に適しており、不安感や動悸、不眠、イライラなどの精神症状を落ち着かせる働きがあります。神経の興奮からくる様々な不調に用いられます。
  • 加味帰脾湯(かみきひとう): 心身の疲労が溜まっており、不安感や不眠、意欲の低下などが顕著な場合に用いられます。血を補い、心と体を養うことで、精神的な安定をもたらします。
  • 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん): 貧血気味で冷えやすく、疲れやすい人に適しています。むくみや冷え症を改善し、それに伴う精神的な不調を和らげる効果があります。

漢方を選ぶ上での注意点

漢方薬は、西洋医学のように「特定の病気にこの薬」と決まっているわけではなく、個人の「証(しょう)」(体質や症状の現れ方)に合わせて選ばれます。そのため、同じ「感情の起伏」という症状でも、人によって適した漢方薬は異なります。

  • 専門家への相談: 漢方薬を試す際には、必ず漢方専門医や薬剤師に相談し、ご自身の体質や症状に合ったものを処方してもらうことが大切です。
  • 自己判断での服用は避ける: 市販の漢方薬もありますが、自己判断で服用すると効果がないばかりか、体質に合わずに副作用が出る可能性もゼロではありません。

年齢による感情の起伏は、心身の変化が複雑に絡み合って生じるものです。漢方は、その根本的なバランスの乱れを整えることで、穏やかな状態を取り戻す手助けをしてくれます。

そのため、漢方薬の選択も、単に「イライラを抑える」だけでなく、その人の根本的な原因(例えば「肝気鬱結」なのか、「腎虚」なのか、あるいは両方なのか)を見極め、全身のバランスを整えることを目的として処方されます。

例えば、

  • イライラや怒り、精神的な高ぶりには、気の滞りを改善する加味逍遙散抑肝散
  • 不安感や不眠、動悸には、心の機能を補う柴胡加竜骨牡蛎湯
  • 心身の疲労が根本にある場合には、心と脾を補う加味帰脾湯

このように、個人の状態に合わせた漢方薬が選ばれるのが特徴です。

漢方の専門家に相談することをおすすめします。

感情の起伏とうまく付き合うには

年齢による変化は避けられませんが、感情の波を穏やかにするための方法はあります。

  • 生活習慣の見直し: 十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動は、ホルモンバランスや自律神経を整えるのに役立ちます。特にウォーキングやヨガなどの軽い運動は、気分転換にも効果的です。
  • ストレスの管理: 趣味や好きなことに時間を費やしたり、信頼できる人に話を聞いてもらったりするなど、自分なりのストレス解消法を見つけましょう。
  • 専門家への相談: あまりにも感情の起伏が激しく、日常生活に支障をきたしている場合は、無理をせず医師やカウンセラーに相談することも大切です。

年齢を重ねることは、感情の揺れを含む多くの変化を伴います。ご自身でできる対策を試してみることはもちろん、必要であれば専門家の助けを借りることも一つの選択肢です

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