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Q:自律神経のバランスが崩れると身体がだるくなる理由、そして漢方医学的な対処法について、わかりやすく教えて下さい。
A:自律神経の乱れが、なぜ「疲労感」につながるのか、理由と対策を体質別に簡単に説明します。
【なぜ自律神経のバランスが崩れると身体がだるくなるのか?】
自律神経は「交感神経」と「副交感神経」の2つで構成され、呼吸、血圧、消化、体温などの生命活動を無意識のうちに調整しています。
- 交感神経は「活動モード」、緊張やストレス時に優位になります。
- 副交感神経は「休息モード」、リラックスや睡眠時に優位になります。
このバランスが崩れると、以下のような影響が出ます:
- 血流が悪くなる → 酸素や栄養がうまく届かず、筋肉や脳がだるく感じる。
- 消化機能の低下 → エネルギーが作られにくくなり、疲れやすくなる。
睡眠の質が低下 → 十分に休めず、慢性的な疲労感が残る。
【1. 気虚(ききょ)タイプ】
特徴:
- 常に疲れやすい・だるい
- 声に力がない
- 少し動くだけで息切れする
- 胃腸が弱く、下痢しやすい
- 朝起きるのがつらい
原因:
体を動かすエネルギー(気)が不足しているため、回復力が弱くなっている。
漢方薬:
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
- 身体がだるく、朝起きるのがつらい人に。
- 食事に味がなく、少しでも多く食べると、眠くなってくる人に。
黒人参(くろにんじん)
- 胃腸も弱く、腎臓や膀胱、生殖器系も弱い人に
- 落ち込みやすい傾向がある人に。
六君子湯(りっくんしとう)
- 胃腸が弱く、食欲がわかない、胃もたれ、吐き気がする人に。
- 倦怠感が強く、疲れやすい人に。
- 痰が多い、咳が続く人に。(上記の症状がある人の咳や痰)
生活アドバイス:
- 無理せずこまめに休憩を取る
- 消化によい食事(おかゆ、温かいもの)を心がける
睡眠をしっかり取る
【2. 気滞(きたい)タイプ】
特徴:
- ストレスが多く、イライラしやすい
- 胸やお腹が張る感じ
- のどに違和感(梅核気)
- 疲れているのに休んでも回復しない
原因:
ストレスなどで「気」の流れが滞っている状態。エネルギーはあるが使えない状態。
漢方薬:
加味逍遙散(かみしょうようさん)
- ストレスや不安による体調不良の人に。
- イライラしやすい、のぼせっぽい、情緒不安定の人に。
- 月経不順やPMS(月経前に身体も心も不安定になる)がある人に。
- 疲労感、冷えのぼせのある人に。
- 更年期でイライラ・不眠・ホットフラッシュなどがある人に。
柴胡疎肝湯(さいこそかんとう)
- ストレスによる胃腸症状(腹痛、腹部膨満)がある人に。
- 怒りっぽい、胸脇部のつかえがある人に。
- 自律神経の乱れによる症状がある人に。
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
- 精神不安、イライラ、不眠が強い人(交感神経が過剰に働いている状態)に。
- 動悸、焦燥感が強い人に。
- 血圧が高め、便秘傾向
- 神経過敏なタイプ・心と身体の緊張を緩めてくれます。
- 冷たいものを食べても、下痢をすることがほとんどない人に。
生活アドバイス:
- 軽い運動や深呼吸で気を巡らせる
- ストレス発散の時間を意識的に作る
- カフェインやアルコールを控える
【3. 血虚(けっきょ)タイプ】
特徴:
- 顔色が悪く、疲れやすい
- めまい、立ちくらみ
- 集中力が続かない
- 不眠や夢が多い
- 生理不順や経血量が少ない(女性)
原因:
血(けつ)が不足し、脳や筋肉に十分な栄養が届かず、疲労感が出やすくなる。
漢方薬:
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
- 冷え性、貧血傾向がある人に。
- むくみ、めまい、月経不順などの症状を持っていることが多い。
- 胃腸虚弱で痩せ型の女性の場合は、朝鮮人参を加えるとさらによい
四物湯(しもつとう)
- 血液(赤血球)不足による顔色不良、疲労
- 月経不順、もっとひどくなると無月経になる人に。
- 手足の冷え、皮膚の乾燥が強い人に。
- 貧血気味、肌のツヤがない人に。
生活アドバイス:
- 睡眠時間をしっかり確保する
- 鉄分・たんぱく質をしっかりとる(レバー、ほうれん草など)
心身を温める習慣を持つ(湯船につかる等)
【4. 気血両虚(きけつりょうきょ)タイプ】
特徴:
- 上記の気虚+血虚の混合型
- 疲れやすくて貧血ぎみ、気力もわかない
- 心身ともに弱っている
漢方薬:
十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)
貧血の傾向のある全身衰弱の人に用います。
- 大病後、体力が回復しない人に。
- 食欲不振、疲労倦怠が続く人に。
- 冷え・貧血・筋肉が弱い人に。
人参養栄湯(にんじんようえいとう)
- 十全大補湯と類似だが、より消耗が激しい場合
- 慢性疾患後の体力低下、息切れ、冷え
- 食欲不振、手足の冷え
- 神経衰弱、寝汗、動悸
生活アドバイス:
- 睡眠と栄養を最優先
- 気疲れ・神経疲れを避ける
- 休養と活動のメリハリを意識する
【5. 水滞(すいたい)タイプ】
特徴:
- 身体が重だるく、むくみやすい
- 頭がボーっとする
- 天気(特に湿度)で体調が悪化
- 胃腸が弱く、水分代謝が悪い
原因:
体内の「水(すい)」が滞り、余分な水分が溜まってしまっている状態。
漢方薬:
五苓散(ごれいさん)
- むくみ、めまい、吐き気、頭痛
- 二日酔い、頭重感、天気の悪い日に体調が悪化
- のどが渇くのに、水分代謝が悪くなる(水滞)
- おしっこが出にくくなる、水様下痢(おしっこになるべき水がウンチに回った下痢)
- 体力中等度以上の水滞タイプ
半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)
- 頭痛、めまい、ふらつき
- 胃腸が弱く、身体に湿気がたまりやすい
- 吐き気や食欲不振を伴う
- 低気圧・疲労時に症状悪化しやすい
生活アドバイス:
- 冷たい飲み物・生ものを控える
- 湯船につかるなどして体を温める
水分の摂りすぎに注意する